私は、先の敗戦が悔しい。それは、三百万の命を贖って日本人が得たものが、従順と思考停止であるからだ。近代を攫んだ日本人は、近代を超克せんとする使命に燃え、そして近代に敗北した。荒廃した国土を前に学んだのは、その目標と手段とに対する評価ではなく、目的を持ったこと自体への反省であった。
私は、先の敗戦が悔しい。それは、かつての日本人が敗戦に至った構造を、こんにちの日本人が宛らに引き継いでいるからだ。日本国としての自主と挑戦を悪と決めつけた日本人は、戦略の不在に目を背け、ひたすらに目先の成長に邁進した。共同体としての展望がないことを、経済成長の夢と職人的努力の物語で誤魔化しながら。
私は、先の敗戦が悔しい。それは、成熟した文化を持つ日本人が、近代国家の物語や戦略を創造することについて、無関心になったからだ。数年単位の手法のカイゼンは重んぜられる。数千年単位の和を守る心は尊ばれる。しかし、数十年から数百年単位の地図を描く者は浮かばれない。
九月十六日を以って、骸骨を乞うことに致しました。国の最前線を見、公に奉仕するという入隊の動機は、満たされました。今後は、日本が文化国家としての戦略を持つために、従事して参ります。
こんにちまで自衛官としての希望を抱かせてくださった皆様には大変恐縮ですが、今後ともよろしくお付き合いくだされば幸いです。